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全曲レビュー #55:"Lick Your Fingers Clearn" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Lick Your Fingers Clearn / リック・ユア・フィンガーズ・クリーン" -- AQUALUNG Remastered Edition Bonus Truck

初出は20周年ボックスセット。AQUALUNGと同時期にレコーディングされた曲で、元々はシングルとしてリリースされる予定だったが、何らかの理由でボツとなった。アルバム未収録曲にもかかわらずリリース予定日がアルバムと近かったからともいわれているがそれならばリスケすれば良いだけなので説得力に欠ける。

妙に明るい展開なのでアルバムに入らなかったのは理解できる。後に改作されてWARCHILD収録の"Two Fingers"となったので、日の目を見ることは出来たといえるのが救いか。


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全曲レビュー #54:"Wind Up" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Wind Up / 終末" -- AQUALUNG 1971年

アルバムの最後を飾る曲。アルバム1曲目の"Aqualung"がエレクトリック→アコースティック→エレクトリックという展開だったのに対し、この曲はアコースティック→エレクトリック→アコースティックという逆の展開になっている。また、両曲ともJETHRO TULLに珍しくギターソロが入っており、フルートは入っていない。これらはIan Andersonの計算と思われる。

歌詞は宗教教育を題材にしているが、本意はAndersonが幼少期に両親より受けた厳格な教育に対する皮肉である。しかし、普通に聴けばやはりスレスレな歌詞内容らしく、後にメンバーとなるAndrew Giddingsはリアルタイムで聴いていたが、実に共感できる内容だと感じたらしい。

でも"終末"という邦題は突っ走りすぎだと思う。時代性?


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全曲レビュー #53:"Locomotive Breath" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

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"Locomotive Breath / 蒸気機関車のあえぎ" -- AQUALUNG 1971年

言わずと知れた代表曲。JETHRO TULLの3大代表曲をあえて挙げるとすれば、この曲と"Aqualung / アクアラング""Thick As A Brick / ジェラルドの汚れなき世界"だと思うが、他の2曲がまれにセットリストから漏れることがある一方でこの曲はほぼ確実に演奏される。

ピアノとギターの長いイントロの後、印象的なリフが反復するTULL流ハードロックである。ブラッシングを交えたリフ自体がタイトル、すなわち陸蒸気のピストン駆動音を表しているが、中間の激しいフルートソロも汽笛を連想させる。

歌詞は(Ian Andersonがエジンバラでの幼少期に学んだ)長老派の予定説をネタにして宗教と世俗の矛盾を歌っている・・という説があるが(Allen Nollen, P.71)、どうだろうか。Old CharlieをCharles Darwin(チャールズ・ダーウィン)に擬するとか、言われてみればそう取れなくもないが、深読みしすぎのような気もする。他に死をテーマにしているという説もある(Russo, P.60)。結局のところ、いつものパターンのただ曖昧で良く分からない歌詞にBibleだのGodだのキーワードをちりばめてあえて前後の曲との整合性を取ろうとしたAndersonのイタズラではないだろうか?

AQUALUNGのアルバム制作は難産だったと言われ、Ian Andersonはバンドが自分の思い通りの音を出せないことに苛立っていたという。そのためか、Andersonは他のメンバーに先立ってドラムとギターの一部を自らプレイしている。結果、John Evanが追加したイントロ以外は、ほぼAndersonのアイディア通りの出来上がりらしい。

なお、Ian Andersonは(少なくとも当時は)車の運転免許を持っておらず、鉄道がお気に入りの交通手段だったらしい。

私はやっぱりただの"train song"だと思うが・・・




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全曲レビュー #52:"Slipstream" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Slipstream / 後流" -- AQUALUNG 1971年

口直しのようなアコースティック小曲。が、これもまた宗教をテーマにした曲で、本当の信心はないが金は積む信者(?)及びそれに応える宗教者への皮肉と思われる痛烈な歌詞である。AQUALUNGのレコードがキリスト教団体に焼かれたという話があるが、これを聴いていて焼いていたとしたらどんだけ腐敗してるんだということだ。Ian Andersonも困ったろうな。(いや、それみたことかと笑っていたか?)

曲自体は、David Palmerのストリングズが絡む美しさが絶品である。TULLのアコースティック曲の中でもかなり後口が良い・・・歌詞以外。

そして、次に来る名曲の露払いとしてもなかなかの演出である。


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全曲レビュー #51:"Hymn 43" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Hymn 43 / 賛美歌43番" -- 「AQUALUNG」 1971年

"My God"と同じく宗教をテーマにした曲であるが、勝手に賛美歌を作っているわけで、存在自体が挑戦的である。もっとも音楽的には賛美歌のスタイルを踏襲しているわけではない。

アルバムA面の"Up to Me"とベースは同じ曲だが、こちらはJohn Evan(ジョン・エヴァン)のピアノが良い味を出していてポップ。が、歌詞は痛烈な皮肉に満ちており、キリスト教の信者でなくてもヒヤヒヤする。

近年ライヴで演奏されるようになったが、トラッドパートが加えられ斬新なアレンジになっている。

米ではシングルカットされたが91位に終わった。果たしてラジオで流せたのだろうか?


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全曲レビュー #50:"My God" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"My God / マイ・ゴッド" -- 「AQUALUNG」 1971年

Choosing My Words with Care...

いろいろと物議をかもした曲。

アコースティックパート、エレクトリックパートそしてフルートソロとJETHRO TULL / ジェスロ・タルの美味しいところ3点セットが揃った代表曲であり、すでに前作「BENEFIT」のツアー時から演奏されていた。

名曲ではあるが、歌詞が宗教を批判しているとして問題とされた。形式主義化した宗教生活?に対する皮肉が本来の趣旨であったが、宗教そのものを批判していると認識されたらしく、レコードを"焚書"までされたそうだ。

歌詞自体は、「BENEFIT」ツアー時のライヴバージョンとスタジオバージョンでは若干異なる。例えば、
・ライヴバージョン:"The Jewish, Christian, Muslim / is waiting to be free / each claiming just a part of Him / whilst a part of me"
     ↓
・スタジオバージョン:"The bloody Church of England / in chains of history / requests your earthly presence / at the vicarage for tea"

余計過激になってる気がするのだが・・・矛先が英国国教会にのみ向いているように取られかねない。

一方で、
・ライヴバージョン:"And the graven image Catholic / with His plastic crucifix"
     ↓
・スタジオバージョン:"And the graven image you-know-who / with His plastic crucifix"
と、ぼかしてややマイルドになった部分もある。元はやばいだろ。常識的に考えて。

現在のIan Anderson(イアン・アンダーソン)は「もっと注意して言葉を選ぶべきだった」と大いに反省しているが、あっちは日本と違いこういう話題はセンシティブである。大きな反発を呼んだ。もっともそれに勝る共感もあったからこそこのアルバムで世界的なバンドになれたわけではあるが。

推測だが、当時のIan Andersonのお方様のJennieがユダヤ人だったことがAndersonに宗教生活に対する多面的な見方を芽生えさせ、それが歌詞に反映されたのでは・・と思う。が、JETHRO TULL研究の中心である欧米ではこういう話題自体がセンシティブなためかあまり考察されてないように感じる。

ちなみにIan Anderson自身は、(少なくとも現在は)敬虔なキリスト教信者である。


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全曲レビュー #49:"Up to Me" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Up to Me / アップ・トゥ・ミー" -- 「AQUALUNG」 1971年

引き続きアコースティック。冒頭と途中で聞こえる変な声はJeffrey Hammond(ジェフリー・ハモンド)だろう。実はアルバムB面の"Hymn 43"と根は同じ曲で、アレンジが全然違う。この"Up to Me"の方はリフのあたりがかなり変てこな印象を受ける。静の部分はいつものIan Anderson(イアン・アンダーソン)節だが。

ライヴでは長くプレイされてこなかったが、「AQUALUNG LIVE」においてお披露目された。2005年の来日公演2日目でも演奏された。

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全曲レビュー #48:"Wond'ring Aloud" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Wond'ring Aloud / 驚嘆" -- AQUALUNG 1971年

アコースティック小曲。元々は組曲形式の長い曲で、Glenn Cornick(グレン・コーニック)在籍時にレコーディングされたがボツった。("Wond'ring Aloud, Again""Wond'ring Again"として後に陽の目を見る。)これはその最終部を歌詞を変え独立させた曲である。

John Evan(ジョン・エヴァン)のピアノとDavid Palmer(デイヴィッド・パーマー)によるストリングスアレンジがIan Andersonの静かな弾き語りを引き立てている佳曲。

これまで何だか下品なヴォーカルが続いていたので、このジェントルな展開は意表を突く。これもまたIan Anderson(イアン・アンダーソン)節です。


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全曲レビュー #47:"Mother Goose" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Mother Goose / マザー・グース" -- AQUALUNG 1971年

前曲に引き続きアコースティック曲。
ただし弾き語りではなくバンド演奏で、エレキギターも少々入っている。笛の音はフルートではなく、Jeffrey HammondとMartin Barreによるリコーダー。サイドヴォーカルはおそらくJeffrey Hammond。

ベスト盤に収録されることもある有名曲ではあるが、ライヴではあまりプレイされてこなかった。近年演奏されるようになり、2005年の来日時にも演奏された。

タイトルの"Mother Goose / マザー・グース"とは英国の古典童謡のことで、ナンセンスな歌詞が多いのだが、この曲の歌詞もやはりナンセンスである。

"And a foreign student said to me -- was it really true there are elephants and lions too in Piccadilly Circus?"

・・・今だから白状します。私も初めて英国に行くまで、ピカデリー・サーカスはサーカス団だと思ってました。




YouTube: Jethro Tull - Mother Goose/Jack-A-Lynn




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全曲レビュー #46:"Cheap Day Return" [e:全曲レビュー, 1968-1973]

"Cheap Day Return / 失意の日は繰り返す " -- AQUALUNG 1971年

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Ian Anderson(イアン・アンダーソン)得意のアコギ弾き語り。中でもこの曲は約一分半しかない文字通りのアコースティック小品となっている。
イントロのアルペジオが美しい。

歌詞はパーソナルなもので、入院した父親の見舞いにブラックプールに帰郷したことを歌っている。

歌詞中のPreston(プレストン)とはブラックプールへの分岐点に当たる駅であり、また"old man"は父親を意味する。

父親を見舞いに行ったら看護婦が紅茶を出してくれ、地元の有名人であるAndersonのサインをねだったんだと。

というわけで日本盤の歌詞対訳は間違っている。

また、タイトルの"Cheap Day Return"とは日帰り往復切符のことで、邦題も誤訳である。この歌は父親の見舞いのためでも日帰りで里帰りしなければいけないAndersonの多忙さをも示している、のだと思う。
AQUALUNGは反宗教のコンセプトアルバムだなどと未だ一部で誤解されているが、このアルバムを含め初期Tullの歌詞の根底に匂うのは、Ian Andersonが幼少時に両親に受けた(長老派の)厳格な教育と親子の対立である。ここで父親への歩み寄りが歌われているのは、そこに一つの区切りがついたということを示唆しているのかもしれない。

ちなみに、往復切符の"Cheap Day Return"が片道切符と大して値段が違わないのは英国の摩訶不思議である。
なお、ここで歌われている父親James Andersonは70年代いっぱい存命する。そして、Ian Andersonは息子にJamesと名付ける。


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