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全曲レビュー #231: "Meliora Sequamur" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Meliora Sequamur / 第5章:学究の徒:真理を求めて" -- HOMO ERRATICUS Ian Anderson Solo 2014年

教会音楽のようなオルガンではじまるまったり曲。キリスト教伝来の前曲に続き、その影響下にある教育の展開をテーマにしている。
中世に大学制度が拡充されるとともに中世グラマースクールは基礎教育の修養場となっていくわけである。
が、歌詞はその教育現場をなんだか暗く描いている。

それは、タイトルのMeliora Sequamur=Let Us Follow Better Thingsが、Ian Andersonが卒業したブラックプール・グラマースクール(現コリージエット・ハイスクール)のモットーであることとも関わる。JETHRO TULL発祥の地はさかのぼればこのブラックプール・グラマースクールともいえるのでそう斜に構えんでも、と思わなくもないのだが、教育ネタは皮肉に捉えるのがAnderson流である。("Wind Up"とかね。)
後の曲でもあるが、HOMO ERRATICUSは少しだけIan Andersonの自叙とリンクしているようだ。

中間部とラストでは本アルバムで繰り返される変則メロディが顔を出す。また、Ryan O'Donnellもリードヴォーカルを取っている。やはりO'Donnellのヴォーカルは新鮮で、曲の魅力を引き出している。ややまったりな展開のところに違うヴォーカルを配したのは成功だろう。


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全曲レビュー #230: "Puer Ferox Adventus" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Puer Ferox Adventus / 第4章:荒野の予言者:新たな時代が印され" -- HOMO ERRATICUS Ian Anderson Solo 2014年

タイトルはラテン語。英語でWild Child Coming。邦題もArs Longa Vita Brevis少年易老学難成に倣って漢文にすれば良かったのに。

歌詞は一応キリスト教伝来を下敷きにしているのだが、オープニングSEが戦争の音でもう皮肉全開である。

で、冒頭でThe Isle of Lindisfarnと出てきて個人的に感無量である。これはイングランドとスコットランドの国境近くに浮かぶホーリー島のことで、かつてヨークにJethro Tullのライヴを見に行った帰りに鉄道の車窓から見て、すごく気になって調べたことがある。車窓からだと近海にぽつんと島があって城が立っており実に神秘的なのだ。(結局行けなかったが。)



このホーリー島というのはイングランドにおけるキリスト教布教の基地だったわけだが、歌詞は時系列をさかのぼり、ローマ皇帝のコンスタンティヌス1世によるキリスト教の公認(そしてそれに政治的な事情が背景あったことを匂わせる)、そしてキリスト本人の話へと続く。しかし非常に曖昧で正直良く分からない。Wild Child=野生児、というのは処女懐胎を指してるんだろうか・・・

サビの"There's a new age dawning here, to an old age plan"は"A New Day Yesterday"の"It was a new day yesterday but it's an old day now"を連想させる。なんか結局ポジティブな解釈になってしまうのだが。

肝心の曲であるが、この曲は7分を超え、アルバムで最も長い。また、テンポが遅いこともありやや中だるみの感があるのは否めない。終盤のソロでやっとハードになるがすぐもとのスローな歌に戻る。このソロで終わって次に繋いだほうが良かったと思うのだが(次もスローだし)、Ian Andersonはどうしてもキリスト教(の展開)に嫌味を言いまくりたかったらしい。
また、Andersonのヴォーカルが高音部がかなり苦しく、それも曲の魅力を引き出せてない一因のようにも思う。Ryan O'Donnellに歌わせるべきだった。一方でJohn O'Halaのオルガンは実に良い音を出していてグリッサンドも効かせて実に70年代っぽい。


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全曲レビュー #229: "Enter The Uninvited" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Heavy Metals / 第3章:侵略者たち:帝国を蹂躙せし者" -- HOMO ERRATICUS Ian Anderson Solo 2014年

ダダダダダっていうリズムが実に不規則でプログレ感が満載。アルバムリリース前にフリーダウンロードで公開されていた曲で、Ian Andersonも相当の自信のある曲だと思われる。確かに相当凝っていて練りに練った部分があるのだろう。フルートとキーボードがやさしいメロディを奏でる一聴すると平和な曲だが、リズムアレンジは相変わらずえぐい。

事前公開されていたのは歌詞にも理由があると思う。「移住、移民」であるアルバムコンセプトをギュッと凝縮したような歌詞である。招かれざる客、というわけだ。ローマ人やアングロサクソンが歌われる中、サビでいきなり現代の米国発のブランド名が(一部名前を変えつつ)連呼される。第二次大戦後の米国文化の流入・伝播を示唆していて、古代英国史を歌っていたはずなのにいきなり刻を越えている。

そもそも、本作のコンセプトは1928年没のErnest T. Parrittの歴史書をベースにしているということになっているので、こういう現代のブランド名が出てくるはずはないのだが、Gerald Bostockが加筆した部分という立付けなのだろうか。まあ、ネタだからどうでもいいか。

ブランド名連呼を締めるのは人気米国ドラマ、The Walking Dead / ウォーキング・デッド。Andersonの婿Andrew Lincoln(アンドルー・リンカン)が主人公Rick Grimes(リック・グライムズ)を演じるドラマで、最後の一節「Rick保安官が~」というのはこのドラマの頭部を破壊することでゾンビを倒すという設定にちなんでいる。ちなみに、Andrew Lincolnは本アルバムのリリースレセプションにも出席していた。

最後の最後のシンバルが凄くかっこいい。

http://www.amctv.com/shows/the-walking-dead


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全曲レビュー #228: "Heavy Metals" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Heavy Metals / 第2章:鉄器の時代:発展に於ける栄光と暗黒の歴史" -- HOMO ERRATICUS Ian Anderson Solo 2014年

グラミー賞のことを歌ったのかと思ったらそうではなかった。

ハードロックから一転してアコギ弾き語り小品。なんとなく前作Thick As A Brick 2の"Upper Sixth Loan Shark"に似ている気がしなくもない。
Heavy Metalsというタイトルでこういう曲なのはわざとだろう。"Hum~"というコーラスはIan AndersonとJohn O'Halaによるもの。Heavy Metalsの頭文字を取っているのだろうか?

鉄器の出現とそれが農具から武器につながりひいては争いの源になることを歌っている。
(現実の歴史でも鉄器文化を花開かせたヒッタイトはそれを軍事力に利用し西アジアに覇を唱えた。)


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全曲レビュー #227: "Doggerland" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Doggerland / 第1章:祝福された大地:帝国の誕生" -- HOMO ERRATICUS Ian Anderson Solo 2014年

現時点でのニューアルバム。Ian Andersonのコメントを読むと、実質的にJethro Tullのアルバムといって良いようです。
再来日を祈りつつ、熟聴しながらぼちぼちレビューしたいと思います。

さて、"Doggerland"。
1曲目としてつかみはオーケーだろう。オーケーどころか、アルバムの中でも特に印象に残る曲となっている。
まずイントロに安心する。前作Thick As A Brick 2のイントロがThick As A Brickの続編を示すイントロで、独立したアルバムのそれとしてはパンチ不足だったから特にそう感じる。
このイントロメロディは形を変えながら後の曲でも出てくる。

実にロックな展開でありながらIan Andersonのアコギ弾き語りが絡むという、もろにJethro Tullじゃないですか、これは。
ハードなギターソロに続けて実に大仰なハモンドオルガンのソロが続くという典型的70年代ハードロックな様式を踏んでいるのには驚く。Tullはこんな王道は滅多に取らなかったからだ。しかも独立したフルートソロはない。Florian OpahleもJohn O'Haraも熱演。

Doggerland(ドッガーランド)とは、太古グレイトブリテン(島)がヨーロッパ大陸と地続きだったころ現在の北海のあたりに存在したといわれている陸地のことである。ドッガーランドから人々がグレイトブリテン島に移りEnglandをつくったことを歌っている。(ここではおそらく意識的にEnglandという言葉を使っている。)


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全曲レビュー #226: "Part of the Machine" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Part of the Machine / パート・オブ・ザ・マシーン" -- CREST OF A KNAVE Remastered Edition Bonus Truck 2005年

元来は20周年BOXのコンピレーション製作時に新たにレコーディングされた曲。

まさにトラッドロックで、やわらかなフォーク調かと思いきや中間部で変態ハードロックへ展開するさまは、20周年ということでファンがJETHRO TULLに期待していることをそのまま凝縮したという感じ。

Ian Andersonのヴォーカルも慣れてきたのかCREST OF A KNAVE本編よりもこなれてきている。

Don Airey脱退後にマルチプレイヤーのMaart Allcockが加入した後のレコーディングで、彼の持ち味が十二分に発揮されていると思う。Allcockはエレキギターも弾いている。

パーソネル:
Ian Anderson / イアン・アンダーソン(ヴォーカル、フルート、アコースティック・ギター、ホイッスル)
Martin Barre / マーティン・バー(エレクトリック・ギター)
Dave Pegg / デイヴ・ペグ(ベース)
Martin Allcock / マーティン・オールコック(ブズーキ、エレクトリック・ギター、キーボード)
Gerry Conway / ジェリー・コンウェイ(ドラム)


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全曲レビュー #225: "Raising Steam" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Raising Steam / レイジング・スティーム" -- CREST OF A KNAVE 1987年

アルバムの最後はMartin Barreのギターを前面に出したハードロック。おそらく計算した配置だろうが、打ち込み&ギターハードロック&フルートなしと最初の曲の"Steel Monkey"とスタイルが近似している。

はっきり言っていかにも打ち込みなキーボードは興ざめだが、ソロも用意されているMartin Barreのエレキギターがやはり光っている。ほとんどメロディをなぞれないIan Andersonのヴォーカルの弱さを補って余りある熱演である。

パーソネル:
Ian Anderson / イアン・アンダーソン(ヴォーカル、キーボード、ドラムマシン)
Martin Barre / マーティン・バー(ギター)
Dave Pegg / デイヴ・ペグ(ベース)


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全曲レビュー #224: "The Waking Edge" [g:全曲レビュー, 1980-]

"The Waking Edge / ウェイキング・エッジ" -- CREST OF A KNAVE 1987年

レコーディングメンツから、"Budapest"と近い日程でレコーディングされたと思われるが、曲調もやや似ている。
スローテンポのバラードで、"Budapest"と"Said She Was A Dancer"の中間のような曲。特に新たな展開や大きく盛り上がることもなく終わる小曲だが、かえってメロディの良さが印象に残ってこのストイックさが良いと思う。少しだけベースソロがあるのも価値がある。

アナログでは収録時間の関係でカットされていた。

パーソネル:
Ian Anderson / イアン・アンダーソン(ヴォーカル、キーボード)
Martin Barre / マーティン・バー(ギター)
Dave Pegg / デイヴ・ペグ(ベース)
Gerry Conway / ジェリー・コンウェイ(ドラム)
Ric Sanders / リック・サンダーズ(ヴァイオリン)

Ric Sandersはなぜかリリース当時クレジットされていなかった。


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全曲レビュー #223: "Mountain Men" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Mountain Men / マウンテン・メン" -- CREST OF A KNAVE 1987年

元々は"Budapest"の一部だった曲で"Budapest"が練り上げられる過程で外され、独立した曲となったらしい。
Martin Barreのエレキギターが映えるハードロック。Barreや相変わらず自由奔放なDave Peggのベースに比べ、Doane Perryのドラムは遠慮がちに感じる。この頃はライヴではバスドラドカドカだった人だったんだが。

こうして聴くと確かに"Budapest"とはあまり共通性はなく同じ曲だったことが想像できないが、流出デモは"Budapest"のコード進行にこの"Mountain Men"のメロディが乗るという胸熱展開だったりする。(ライヴでやってくれんかな・・・)

CREST OF A KNAVEがリマスターされる際はこの曲を含む"Budapest"オリジナル完全版がボーナストラックになると思っていたのだが・・・コレクターズエディションを待つしかないのか?

パーソネル:
Ian Anderson / イアン・アンダーソン(ヴォーカル、フルート、キーボード)
Martin Barre / マーティン・バー(ギター)
Dave Pegg / デイヴ・ペグ(ベース)
Doane Perry / ドーン・ペリー(ドラム)




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全曲レビュー #222: "Budapest" [g:全曲レビュー, 1980-]

"Budapest / ブダペスト" -- CREST OF A KNAVE 1987年

Ian AndersonがCREST OF A KNAVEを高く評価しているのはひとえにこの曲の存在ではないだろうか。80年代のJETHRO TULLの代表曲、もちろん全歴史の中でもトップランクに位置する名曲がこの"Budapest"である。

ツアーでハンガリーのブダペストを訪れた際に出会った少女にインスパイアされた曲で、元々は20分を超えアルバム片面を占める予定だったが最終的に半分の長さにアレンジされた。なお、次の曲"Mountain Man"はそのカットされた部分に含まれていたことが流出したデモテープで確認されている。

イントロのキーボード&フルートメロディの美しさでノックアウト、名曲確定なのだがその後の展開も期待を裏切らない。そしてMartin Barreのギターが程よく自己主張している。(Barreはアコギも弾いている。)

10分強にこれでもかとメロディとテクニックが詰め込まれており、Andersonの作曲の一つの集大成と言ってもよいと思う。Andersonとしても試行錯誤と冗長さがあった70年代の曲より満足度が高いのだろう。半分の長さに切り詰めたのもそうした挑戦だったのかもしれない。ヴォーカルは例によってMark Knopflerみたいだが。

印象的なヴァイオリンはFAIRPORT CONVENTIONでのDave Peggの同僚、Ric Sandersによるもの。
以後JETHRO TULLのライヴ定番曲となる。

ちなみに、この曲の発端となった1986年のブダペストでのライヴはプロショット録画が存在する。

パーソネル:
Ian Anderson / イアン・アンダーソン(ヴォーカル、フルート、ギター、キーボード)
Martin Barre / マーティン・バー(ギター)
Dave Pegg / デイヴ・ペグ(ベース)
Gerry Conway / ジェリー・コンウェイ(ドラム)
Ric Sanders / リック・サンダーズ(ヴァイオリン)



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